〜2〜 究極の打撃

――目指す理想の打撃は
「自分が全く予想してない球が来たときに、どう対応するか。それが、大事です。試合では打ちたい球は来ない。好きな球を待っていては(打席は)終わってしまう。10回に1回、そんな球が来ても、何の役にも立たない。あまりにも確率が低すぎます。」
――どんなコースのどんな球種でもヒットにすることか
「それも僕の打撃の一部。バットが届く範囲、打てると思った範囲の球は、全てヒットにしたい。ここは苦手だから捨てるということはしません。」
―― 一番のポイントは
「右足をステップしたときに手が(トップの位置で)しっかり残っていることが、僕の最大の特徴。前に少しでも動くと、緩急に対応できない。詰まりたくないため、手を早く出そうとする選手や、そう指導する方も多い。それは僕にとって非常に危ないことです。」
――詰まることはないのか
「いや、詰まりますよ。詰まらせることもある。それは技術の一つ。詰まらせないとヒットに出来ないこともありますから」
――凡打を避けるため、打ちに行っても空振りに逃げたことがあると聞く
「ボールに当てる習性が身に付いているから、難しい。理想の一つですが、あきらめています。数えるほどしか、できたことはありません」

年度 試合数 打数 安打 本塁打 打点 盗塁 打率
92 40 95 24 0 5 3 .253
93 43 64 12 1 3 0 .188
94 130 546 210 13 54 29 .385
95 130 524 179 25 80 49 .342
96 130 542 193 16 84 35 .356
97 135 536 185 17 91 39 .345
98 135 506 181 13 71 11 .358
99 103 411 141 21 68 12 .343
2000 105 395 153 12 73 21 .387
合計 951 3619 1278 118 529 199 .353


――打撃の天才と言われることについて。苦労してもシーズンに130本ほどしか安打を打てない選手が多い中、200本を軽々と打っているように見える
「僕のバッティングは、ヒットが出るようにしているわけですから……。ほかの人よりヒットを打てるゾーンが広いので、人が打てないボールをヒットできるというのが天才の定義だとすれば、そうかもしれない」
――オリックス時代の1998年までは、打撃で悩んだと聞く
「形がなかったんです。打ってはいても、どうしてヒットが生まれたのかという説明ができない。だからあの時期(94−98年)すごいフォームが変わっています。自分の形を探すことで精いっぱいの時期。(毎年首位打者を獲得したが)あれで、数字が出ていないと、つぶれている可能性もありました」
――99年4月、西崎投手(西武)から二塁ゴロを打ったときに形をつかんだ
「100%で待っていた真っすぐ。いい打球がいかないとおかしいのに、セカンドが右へ動くゴロというのは、最悪の結果なんです。はっきり見えましたね、まずい点が。足が(ステップに)入っていく角度であったり、両ひじが(インパクトへ向けて)入っていく角度とか」
――打つ瞬間に自分の打球がイメージできるのか
「(イメージできるのは)ボールが近づいてくる瞬間。勝負はここで決まっている。(イメージすることは)もちろん重要。そうでないと必然的なヒットは生まれない。偶然のヒットが多いようでは、ダメなんです」