〜4〜 守備の神髄

――2001年4月のアスレチックス戦。一塁から三塁を狙った走者を強肩で刺し、「レーザービーム」と実況されました
「僕の肩に対し、チームの首脳陣から信頼を得たことが大きかった。あの試合前までは、示す機会がなく、疑問を持たれていましたから」
――肩の強さは天分ですか?
「そう思います。小、中、高校と投手をやっていたことで、制球が磨かれた面もあると思います」


――良い送球をするには、捕球した瞬間にボールを正確に握ることが大切ではありませんか
「だいたい、うまく握れる。駄目な場合は、送球までの間に握り直す。めったにありませんが……。そして、うまく握れなかった場合に備え、わざと縫い目を外しての送球練習もしています」
――守備範囲がものすごく広いですね?
「この投手とあの打者の対戦だと、どういう打球が来るだろうと予測をする。資料は見ません。自分が持っている感覚です。ライトから捕手の構え方は見えてもサインまでは見えないので、球種が分からない。だから、いくつかのイメージを持って臨む。一つではありません」
―― 一回から九回までの全投球で予測をしているのですか
「もちろんです。打球が飛んで来なくて立っているだけの日もあって、外野手は随分と楽だと思われているかもしれない。でも、実はいろいろなことを考えているので疲れるんですよ。打球がポンポン飛んでくるポジションのほうが、頭は疲れない。僕らは体は疲れなくても、頭がやけに疲れるんです」
――考えすぎて、それが失敗につながることは?
「アメリカでは、あまりありません。日本だと、過度の応援で打球の音が聞こえず、迷うことがありました。この打球が詰まってるのか、勢いのある力のある打球なのか、判断がしづらい。力のある打者が思い切り振り切ったとき、音が聞こえないため、実際は詰まっているのに、一歩下がってしまったりとか。アメリカでは、必ず打球の音が聞こえます」
――右翼というポジションの重要性を、どう考えていますか
「オリックス時代の1994、5年くらいまでは、センターが主だった。その後、仰木監督の判断でライトが主になりました。球場が広くなった現在の野球では、肩が強い右翼手が必要でしょう。一塁走者をライト前のシングルヒットで三塁に行かせてしまうのか、二塁で止められるのかは、全く違いますから」
――かつては、右翼手の評価は低かった
「狭い、昔の球場ならそうでしょう。球場の大型化により、外野手の評価が高まりました。特にライトが。センターは脚力、判断力があって守備範囲の広い選手でないと厳しい。ただし、肩はそれほど重要視されていない。本塁まで遠すぎて、刺すことがまず難しいですから」