〜6〜 精神力

――打席に入る前、バットを正面に立てるなどの動作を必ず行いますね
「集中するための儀式。ゴルファーが行う一連の動作と同じ。自分の形を作って、まず自分を落ち着かせる。自分のペースに持っていくということです」
――バットを立てたとき何を見ているのか?
「最初にバットを見て、それからピッチャーの後ろの方をぼんやり見ている。それからピッチャーを見る。今の形になったのは、98,99年ごろ。いろいろ試して
みて、これがしっくりきたんです」
――投手と打者の対決における精神的な部分についてはどうですか
「お互いが、どれだけ自信を持っているかは、大きい。自信のなさがどちらかに見えれば、その時点で勝負が見えてきます。投手が球を投げてくれば、おびえているのかなど、よく分かる。外からは同じように見える球も、あるレベルでやっている選手なら、違いが打席で分かります」
――相手が上回っていると感じた時、どう対応するのか
「常に相手を上回ろうと思っている。ただコンディションが悪くて、自分の力を完全に発揮できない時は、それを相手に悟られないようにしないといけない。そのためにも、一連の動作が大切です。本来の自分でない状態であると見せた時点で終わりです」
――大きな体の選手の中で戦っていく上で、精神的に強くなるには?
「周りのみんなが大きくてパワーがあるからといって、自分がそれに惑わされてはいけない。自分を見失ってはいけない。常に冷静に自分のことを客観的に見られる、判断できる自分を作ることです」
――何試合かヒットが出ないと雑音も聞こえるのでは
「(打てなかったことは)切り捨てたいが(報道陣に)聞かれるので無理ですね。ヒットが出ない試合が続いていて、次の試合の1打席目でもヒットが出ないと、今日も駄目かと思ってしまう人が多いと思う。でも、そこが大事。きっかけをつかむために、次の打席も集中する自分でないと、まずいですね」
――苦しいことも多い野球に、ここまで引きつけられる魅力は、どこにあるのですか
「終わりがないところです。いくらやっても、完璧にはなれない。何かを達成しても、次がある。それで、自分を向上させられる。これも大リーグを目指した動機の一つですね」